3月18日「宇田川コーリング vol.1」ライブレポート

2014年3月21日

歴史に残る「宇田川コーリング」第1回目のトップバッターを飾ったのは、4人組ガレージポップバンドのアザラシ。
シャウト混じりのざらついたボーカルに、ヒリついたバンドサウンドでクールに決めるのかと思いきや、日本人の琴線に触れる憂いを帯びたメロディを盛り込み、聴きやすさと中毒性いう点も考慮されている楽曲構成がクセになる。
オーディションライブとあって、どこか緊張感漂う場内だったものの、しっかりと自分たちのパフォーマンスを飄々と繰り広げていったのも印象的だ。
攻撃的、毒っけの強い側面を強調した序盤とは一転、名残惜しそうに演奏されたラストナンバー「夜」では壮大なロックバラードを披露。日が沈みかけていくさまを一音一音繊細に紡ぎながらも、感情の高ぶりをありのまま放出した熱量の高いプレイに興奮を覚えた。
彼らの発した音の余韻を最後まで楽しみたい、そんなバンドである。

aza
アザラシ

メロディアスな曲に合わせて“やめてくれよ”の第一声。歌い出しからして、インパクト大だったのが男女混合のピアノロックバンド、くらげである。
水族館で美しく浮かぶ姿と、海での獰猛な姿を見せるくらげの“二面性”を音楽的コンセプトに掲げている同バンド。巧みなリズム使いで会場を酔わせ、“くらげという名前のバンドが他にもたくさんいるので、改名しようかとも思いましたが、くらげといえば私たちだと思ってもらえるように頑張ります”と気合いも十分。
伸びやかな硝子(Vo&Key)の歌声は、低音域で特に魅力が発揮され、その深みのある声で紡がれる“もう何も怖くはないよ”といったポジティブな言葉には安心感が得られ、モヤモヤとした気持ちを晴れやかにしてくれるストレートな言葉では痛快な気分を味わえる。
ボーカルの合間を縫って、言葉を後押しする楽器陣の妙も特筆すべき点である。

kura
くらげ

続いて、サポートメンバーふたりを入れての参加となったPOLTA。
もともと尾苗 愛(Vo)のソングライティングによるバンドを立ち上げるべく結成された経緯もあり、尾苗の人間性や心理描写が浮き彫りとなるアクトを披露。毒のある言葉でも、愛らしい彼女の歌声で空間に発されることで、心地良い音楽へと消化されていく。
特に無邪気に歌い上げる「ステマステル」は現在風刺をコミカルに描いた秀逸作。かわいらしさと同時に凜とした強さを秘めたボーカルは病みつきになること間違いナシ! そして、その世界観の基盤を守るのが福田 傑のベース。
彼自身もソングライティングの才もあることから、歌とサウンド全体のバランスをうまく取りながら厚みを持たせていく。また、“P、O、L、T、E。ポルテです”とバンド名を言い間違えてしまった尾苗を優しくフォローする福田のふたりのやりとりにも自然と笑みがこぼれる。
人間力のあるバンドではないだろうか。

POLTA
POLTA

終始フルスロットルで、ライブの醍醐味である“何もかも忘れて、この瞬間はバカになれ!”を見事に体現させたnoum。120%のポジティブさでオーディエンスと向き合い(いや、ぶつかっていくという言い方が正しいかも)、場内中を巻き込んでいった。
ここまで率先してはちゃめちゃなことをやるバンドを見るのは清々しく、そして“楽しいことをしたい”という想いに素直に従う、彼らの生き様はかっこいい。
世間を賑わすゴシップネタあり、週末ヒロインやソウルフルな歌姫の楽曲をオマージュしたりと本当にやりたい放題! ただ、どんなにネタ満載なことをやろうとも彼らの演奏技術、センスの良さがあってはじめて成立するというもの。
勢いだけでなく、しっかりと音楽を届けることのできる貴重な存在だと思う。

noum
noum

本日の大トリにして、最大インパクトを残していったのは、女性3人組バンドのミケトロイズ。
バンドでありながらも、現在のアイドル戦国時代に突っ込んでいけるビジュアル的要素も兼ね備えた彼女たち。
揃いの黒×白のモノトーンなワンピースにボブといったいでたちで登場。
そして、始まるミニコント!? 序盤こそ、観客を“ぽっか~ん”とさせたものの(筆者もなんじゃこりゃ!? と驚いていたうちのひとりです)、それすらもお決まりの演出だったかのように短時間のうちに会場の空気をホームへと変えていく。始まりは、“何あの子たち!?”の衝撃。
続いて、トリッキーな出来事の数々に笑撃。しかし、最後にはすべてが趣向を凝らした演出だったんだと点と点が線になったことへの感激。彼女たちの良さはぜひその目で観ていただかないと伝わりづらいだのが唯一の難点だろう。
ただ、一度聴けば耳に残るキャッチーさ(この日はにんじん、じゃがいも、でんぱの3ワードが強烈でした)は群を抜いていた。

ミケ
ミケトロイズ

全5組のライブが終了し、結果発表。
3位は愛らしさと毒っけを織り交ぜた音楽性が評価されたPOLTA、2位はこの日いちばんのオーディエンスを巻き込んでの盛り上がりを見せてくれたnoumが受賞。
そして、栄えある1位の座を射止めたのは、何が飛び出すかわからないパフォーマンスを完遂したミケトロイズ!
この3組は、今後4月22日、5月19日、6月23日と開催される「宇田川コーリング」の優秀アーティストらとともに、9月に発売が予定されているコンピレーションアルバムの発売&レコ発イベントに参加。
さらにはLD&Kが主催するイベントへの出場権など、様々な展開が待ち受けているので続報に期待していただきたい。
また、「宇田川コーリング」は前途のように第4回までの開催が決定しているので、より色濃い個性を持ったアーティストとの遭遇を楽しみに待ちたい。(横田“ジャガー”小也加)