4月22日「宇田川コーリング vol.2」ライブレポート

2014年4月27日

前回の盛大なイベント幕開けに続き、第2回目も音源審査を勝ち抜いてきた全5組が出場。
どのバンドも自身のカラーを如実に表したパフォーマンスで観客を魅了し、甲乙つけがたい結果に!

まずは1組目。平均年齢19歳、たかなしうずら(Vo)、村本めぐる(Gu)、松木尚隆(Ba)、小菅(Dr)からなるHalo(ハロ)が登場。

自分の手の届く、ごくごく近い範囲を歌うバンドだ。
あぁなれたらいいなと夢見る姿、だらしない生活を送る当たり前の日常、些細なことで傷ついたり、はたまた癒されてみたり…普通に生活しているようで現実は意外にもドラマチックだなと気づかされる。
そして、Haloの歌うその世界は作り手の元から、リスナーひとりひとりの世界へとリンクし、“どうして、私のことを知っているの?”と不思議な気持ちにさせる。
今にも壊れそうなのに、けっして曲がることのない強い芯を持つ魅惑的なたかなしうずら(Vo)の歌声も相まってHaloの紡ぐ音楽と私たち観客の心がゆっくりと溶け込んでいくようだった。
そして、無理に前へ出るのではなく、その場の空気と一体となるバンド・サウンドが心地よい。

halo

続いては、ひょん(Vo&Gu)とナミツキ(Gu)によるWIP(ウィップ)。
ライブはベースとドラムのリズム隊2名がサポートで参加しての4人編成で行われた。
パステルカラーを連想させる楽曲に自己の内面と向き合うメッセージを乗せ、誰もが経験するであろう思春期特有の希望や夢、焦燥感や切なさといった感情を彷彿させる。
ひょんの爽やかで甘さのある歌声とクリアなナミツキのハーモニーも美しく、聴き手の想像力をいっそうかき立たせていく。いちばん最初に世に出した楽曲として披露された「逢言葉」しかり、聴いた瞬間引き込まれるメロディセンスの高さが光っていた。
また、トークは苦手と言いながらも、その素朴な人柄がうかがえる話ぶりに自然と場内も和やかムードに。安らぎを与える間合いで懐に入りながら、時に確信を突く言葉を投げかけるのもWIPならではのカラーではないだろうか。

wip

イベントも中盤に差し掛かったところで、エネルギッシュなパフォーマンスでオーディエンスを沸かせたのはBLANK BUCKET。原 祐介(Vo&Gu)、下田竜郎(Violin)、増田駿介(Ba)、石川直樹(Dr)という弦楽器を擁するバンドである。
メッセージの発信者である彼らの必死さが伝わる熱を帯びたバンドサウンドに華を添える妖艶な音色を響かせるバイオリンで、ドラマチックな音像を構築。
また、起伏の激しいナンバーを飄々と歌い上げるボーカルの存在感も特筆すべき点のひとつである。お互いの特性を活かしながらも、あくまで全力でぶつかり合う彼らの姿に、拳を突き上げ、一緒になって歌いたい、叫びたいと思わずにはいられない。
ラストにはライブ初披露の新曲「風の散歩道」をもってくる気合いの入りようで、決意に満ちたロックバラードを歌い、それまでの熱さを保ちながら清々しい余韻を残し、ステージを後にした。

blank

エモいプレイでいうならば、オクヤマグナム(Vo&Gu)、シメギヌスノヤリ(Gu)、アサヌマシンガン(Ba)、イワターボX(Dr)the quiltも黙ってはいない。
自信に満ち溢れた不敵な笑みを見せながらのメンバー登場からして“何かやらかしてくれそう”だなと筆者がひそかに期待を募らせたバンド。
先人たちへのリスペクトを感じさせる王道のロックンロール、哀愁感じさせる色っぽいブルース、雄々しいパンクの素養を彼らなりに昇華した楽曲群はクオリティが非常に高く、どれも観客の心を掴むストレートさが潔く、観て&聴いてとても痛快だった。
鬼気迫る主張の激しいギターやしゃがれた低音ボイスで生々しさを醸し出すボーカル、テクニカルかつ骨太なサウンドで楽曲を彩るリズム隊から形勢されるthe quiltは、時代に左右されず、常に色褪せないロックンロールの素晴らしさを轟かせる存在である。

quilt

そして、本日ラストに登場したのが小澤雅樹(Vo&Gu)を中心に結成されたエルカ地平線。
日本人ならば思わずグッとくるであろう、どことなく憂いを感じさせる珠玉のポップメロディを奏でることができる3ピースだ。バンドとしては最少人数の形態でありながら、個々の安定感あるプレイによって奥行きのあるバンドサウンドを展開。
特に躍動感あるドラムには思わず体が揺れ動いた。
ロックを継承しつつ、ただ攻撃的に演奏するのではなく、軽やかに舞うメロディセンスをもってしてポップスを高らかに響かせる。小澤の繊細で温もりの歌声も相まって、それまで熱を帯びていた会場の雰囲気が穏やかな表情を見せていった。
このように自然と自身のフィールドへと変換していくあたり、メンバーそれぞれのバンド経験からくるものなのだろうか。
今年結成ながらしっかりとした関係性がそこにはあり、可能性を大いに感じずにはいられなかった。

eluka

全5組のライブが終了し、結果発表。

3位は青春時代を体感させてくれたWIP、3位は包み込むような優しさが感じられたエルカ地平線が受賞。

そして、第2回の1位に選ばれたバンドはthe quliet!
受賞者を代表して、the qulietのメンバー全員が再びステージに登場し、喜びのコメントを語っていた。
この3組は、前回受賞者に加え、5月、6月と開催される「宇田川コーリング」の優秀アーティストらとともに、9月に発売が予定されているコンピレーションアルバムに楽曲が収録されるほか、レコ発イベントへ参加する。

さらにはLD&Kからのデビューに加えて主催フェスの出場権などが与えられ、ひとつのチャンスからさらなるチャンスを掴んだ。

前回に比べ、今回は平均年齢の若い出場者が目立ったが、その回によってアーティストの世代や特色が変わっていくのもオーディションライブの醍醐味ではないだろうか。

なんたって“一撃必殺”をもったアーティストに出会うべくして開催されているのだから、第3回目もどんな出場者に出会い、どんなドラマが生まれのか楽しみである。