6/23 宇田川コーリング vol.4 ライブレポート

2014年7月4日

音楽レーベル・LD&Kによる新人発掘オーディション・ライブ「宇田川コーリング」。第4回目となる今回で、9月10日に発売させるコンピレーション・アルバムへの参加者が出揃うわけだが、活動歴の浅い若手から経験を積んだ実力派までがバランスよく登場する形に。今夜の熱戦を順を追って紹介していきたい。

1組目、数々のオーディションで優秀な成績を収めているHelsinki Ramadanが登場。
橋本 薫(Vo&Gu)、佐久間公平(Gu)、稲葉航大(Ba)、安部洋介(Dr)による同バンド。
ゆったりと心地よいジャストなところに刻んでいく、彼らのリズムに徐々に身を揺らし始めるオーディエンス。体を揺らすことで、メロディが深いところまで入ってくるような感覚……観客を一種のトリップ状態へ導くのが実にうまいバンドである。
しかし、ただ聴き手を自身の世界へ取り込んでいくのではなく、時にドキッとさせるフレーズを盛り込むことでメッセージを鳴らし、心地よさだけで留めないところも憎い演出である。
筆者が印象深かったのは、1曲目に披露された「へろー、はうあーゆー?」の《素晴らしい世界 愛と哀しみの夜明けさ》の締め括りが芸術的な美しさを感じずにはいられなかった。
全体としてはあっさりとしているが、言葉の使い方、歌い回し、ギター・アンサンブル(バンド・サウンドを強く押し出した「インスタント遁世」でのギターの絡み合いは、また違った面白さがある)など、ちょっとしたスパイスを効かせることで、BGMになり得ない、耳と心にひっかかる音楽を紡いでいく。

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続いては、これが東京で初めてのライブだというTo my SHAWTYのステージ。
沖縄県・石垣島で幼い頃から音楽スキルを磨いてきた現役高校生の黒島龍太朗(Vo&Gu)と、そんな彼の音楽への情熱・意識の高さに突き動かされたプロミュージシャン・弓座志簡(Dr)からなるユニットだ。
世代の違う彼らが“音楽”という共通項のみで繰り広げるライブは緊張感の漂う、スリリングさが特徴。
チームでありながらも、一切の遠慮はなく、いちプレイヤーとしてせめぎ合う姿に惚れ惚れする。互いにアーティストとして絶大な信頼があるからこそ、できるスタイルなのだろう。
弓座が熟練のドラミングで楽曲の大枠をがっちり支えつつ、時にバンドをリードし、時に歌を立たせる絶妙な間合いでドラムを打ち響かせると、黒島も野太いボーカルで猛攻。
さらに、彼の問いかけるメッセージは同世代は特に救いになるような内容が多く、今しか表現できないものを丁寧に築き上げているように思う。
また、黒島の場合は弱冠18歳という年齢も考慮すると将来性に期待が募る。現段階で洋楽ライクなノリが身についているので、自身が生み出す楽曲のカラーを含め、今後どのような成長を遂げるか、注目したい。

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本日紅一点の3組目…が、しかし! その名前からして一抹の不安を覚える、密会と耳鳴り(ex.失禁少女)。
鹿子ちゃこ(Vo&Gu)、ハセ(Gu)、よね(Ba)、メル(Dr)からなる彼女たち。転換中に裸足でいることをMC陣にツッコまれ、恥ずかしそうにしていたうるわしの乙女たちだが、いざ裸足でステージに降り立つと今日いちばんのパワフルなライブを見せつけた。
凶暴さとセクシーさという相反した要素を見事にマッチングさせた独創的なパフォーマンス。ここでいう凶暴さとは、メンバー全員が前衛的に攻めのスタイルでプレイをすること。誰ひとり、引くことを知らない“我の強さ”が快感サウンドを構築していく。
そして、密会と耳鳴り(ex.失禁少女)のセクシーさとは? 楽器を持たなければ皆それぞれに愛らしさはあるが、最初に受けた印象はセクシーさとは違っていた。
ただ、ライブが始まると自信ありげな笑みや挑発的な目線、もちろん歌声を含め、ステージにいる4人の余裕の表れがセクシーさへと結びついているように感じた。
また、演奏力があるぶん、曲がキャッチーでも重量感はしっかりあるのも特筆すべき点であろう。
なかでも、誰の日常にでも潜む“ちょっとした悪”に警鐘を鳴らした「影踏み」は巧みな言葉使いで不快感を与えず問題提示しているところにポテンシャルの高さを感じた。

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4組目、浅野ケンジ(Vo&Gu)、森田直彦(Vo&Gu)、吉田タカマサ(Ba)からなる3ピースバンドのTENDOUJI。中学の同級生で結成、まだ5ヵ月ほどのバンド歴だというが、お互いに気心知れた仲だからか、この3人で演奏する様はすごく観ていてしっくりくる。
キャラの濃いバンドの後でも、落ち着き払った面持ちで丁寧につま弾いていく曲たちはとても優しく、聴き手を包み込みながら場内を爽やかなムードに塗り替えていった。
全編英語詞というのも、ライブ初見だと特に言葉(歌詞)も音のひとつとして楽しむことができ、歌詞の意味合いをあまり気にすることなく、純粋に音楽の素晴らしさに浸ることができた。
アコースティックギターを主軸に、ハートウォーミングな音色が何層にも重なり、厚みのあるバンドサウンドを形成。
この「宇田川コーリング」では、エモーショナルなプレイをするロックバンドのみならず、そことはまた違った持ち味のライブを行うバンドも一緒の土俵で審査される醍醐味が面白いなと、TENDOUJIを観て、ふとそんなことを思う。

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そして、本日の大トリを飾る、天国コケシ(Vo)、真昼間花子(Gu)、コンノハルヒロ(Ba)、ムカイショウゴ(Dr)からなる、THE天国カー。
彼らのライブをひと言で形容するならば“フリーダム”である。
特にボーカルのコケシの運動量といったら! 縦横無尽にステージを動き回ったかと思えば、「グッドラック★天国」は同イベント初の客席フロアの中心へ降りて熱唱。
一人ひとりの顔を見ながら、満面の笑みで“グッドラック”と指のポーズつきで交流していく。
倒立歩行をしてみたり、やっていることはむちゃくちゃだと頭ではわかっているものの、彼らから目が離せない。さらに彼らの根本に根付く歌いたい想いはとてもピースフルで、如実に出たのがストレートな気持ちを綴った最後の「レインボウマン」である。
どんな歌詞でも、すべて応援歌のつもりで歌っている”とコケシが語ったように、形振り構わず、率先して弾けるステージも、嫌みなことをわざわざ言葉にして胸を突き刺すのも“だから、お前は頑張れよ!”といった彼らなりのエールなのだ。
このライブへ来れば、彼に背中を押してもらえる、そんな安らぎを最後には得ることができた。

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熱気冷めやらぬまま、結果発表。
第3位は前評判通りの実力を発揮したHelsinki Ramadan、第2位は“すべては応援歌”と宣言したTHE天国カー。
最後に発表された第1位はパワフルなステージで魅了した密会と耳鳴り(ex.失禁少女)に決定!

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毎回甲乙つけ難い個性を持ったアーティストが集結した「宇田川コーリング」も今回で9月10日発売のコンピレーション・アルバムへの参加者が全員出揃った。
あのアーティストのどの曲が収録されるのか、詳細は追って報告したい。
さらに、愛知県・名古屋にある大須RAD HALLにて「大須コーリング」の開催が決定!
もしかすると、2ndシーズン、3rdシーズン、はたまた全国各地に同イベントが展開するかも!?
次は君の出るチャンス!
今からでも“一殺一撃”を磨き、次回に備えてみてはいかがだろうか。(横田“ジャガー”小也加)